研究内容
資源・エネルギー問題の立場から,バイオマスの利用が注目されています.当研究室では,セルロースを中心とする様々な多糖の固体構造,物理的性質,特異な現象の解明を目指した研究に取り組んでいます.そして,それら構造や特性に関する基礎的知見を礎とし,高機能性材料の開発に関する研究も行っています.
1.バイオマス素材を知る
バイオマスを利用するためには、木材のように自然界に存在する状態をそのまま活かすか、細かく砕いたり溶解させたりするプロセスを通して新しい材料に変換する必要があります。そこで我々は、固体から溶解状態まで、様々な状態における多糖や木材の構造を明らかにするために、X線回折、核磁気共鳴(NMR,MRI)、顕微鏡などの分析手法を用いて構造解析を行っています。さらに、これらの分析装置から得られるデータ解析の手法についても研究を進めており、画像解析等の新しい技術を取り入れながら複雑なバイオマスの構造を理解することを目指しています。
現在進行中の関連テーマ
- セルロースナノファイバーの調製条件と形状
- 酵素合成セルロース微結晶の構造と特性
- NMRによるセルロース溶解状態の解明
- 膨潤セルロースの結晶構造解析
- MRIを利用した木材の非破壊観察
- X線繊維回折図の解析プログラム開発

2.バイオマス素材を制御する
バイオマス素材の特性を最大限に引き出すためには、その構造を制御する必要があります。我々は、磁場を印加することによる配向挙動や、ナノ多孔性のヒドロゲルを調製する方法についての研究を行っています。さらに、得られた材料の物性を評価し、材料の構造と物性の相関を理解することを目指しています。
現在進行中の関連テーマ
- セルロースをはじめとする多糖類の磁場配向特性
- 溶解・再生によって得られるセルロースヒドロゲルの構造と物性
- 培地添加物によるバクテリアセルロースの物性制御
3.バイオマス素材を利用する
以上のようなバイオマス素材に対する構造の理解や制御技術を活かし、力学的異方性フィルムやナノ多孔性吸着剤などの高機能性材料の開発を目指す研究も行っています。材料の原料には天然多糖だけでなく、酵素触媒重合によって得られる非天然型多糖も利用しています。
現在進行中の関連テーマ
- 磁場配向による異方性フィルム・ゲルの作製
- セルロースの溶解・再生によるゲル化を利用した機能性材料開発
- 酵素重合によって合成した多糖を利用した機能性材料開発